3rd Run 『The Trust of the end of The Doubt』

「・・・いた!」
ベリルの案内で、4人は難無くグリム山の頂上まで辿り着くことが出来た。
途中、何度も凶暴化した動物達の襲撃に遭ったが、今の4人にとっては雑魚同然。
破竹の勢いで、全てを蹴散らしていった。
 頂上に着いてから、コハクと結晶騎士・ペリドットの姿が見えた。
相手は結晶騎士、マトモにぶつかれば・・・もしかしたら勝ち目は無いかも知れない。
近くの岩陰にひとまず、その身を隠して様子を見る。
ただ泣いているばかりで、逃げようとしないコハクの姿をベリルは疑問に思った。
「無理言うな・・・コハクは高所恐怖症で、今はその『恐怖』を抑える感情もないんだ」
ヒスイの言う通り、彼女は泣きながら怖いと、兄に助けを求めていた。
 そんなコハクの様子を見ていたペリドットの我慢にも、遂に限界がきた。
「あ〜あ、メソメソメソメソ・・・うざいっての!あたしそーゆーの大っ嫌いなんだよ!!」
音がするほど、コハクを突き飛ばす。
そんなペリドットの態度に、腹が立ったシングが飛び出す。
ベリルの制止も届かず、彼女も飛び出した。
突き飛ばされたコハクは、我慢する感情も持ち合わせておらずさらに泣く。
「あんたねぇ・・・誘拐したあたしが言うのもなんだけどさ、泣いたって状況は変わらないんだよ?」
この状況が、自分で作っておきながら居た堪れなくなったのだろうか。
女だからこそ涙を堪えて強く生きろ、涙を拭いてしゃんとしろとコハクを励まし始めたのだ。
同時、シングが飛び出した直後。
「・・・待って、ヒスイ」
は、彼の後を追いそうなヒスイを呼び止める。
「ソーマは必ず得意属性と弱点属性を持ってる・・・必ずその両属性が対極に位置するとは限らないけど」

冷静に、気付かれぬよう弱点を探せ。

怒りしか見えていなかい。
先ほどの瞳とは打って変わり、の瞳はやけに冷静な色をしていた。
彼女の変わりように驚くが、彼はそれよりも、何故それを自分に告げたかを尋ねる。
「そう・・・だね、やっぱアンタが一番冷静そうに見えたから?弓使いは常に冷静でないとネ」
茶化すようには笑い、ベリルの後を追う。
何かに諦めたように、ヒスイは溜息をつく。
そして、彼も彼女に続いた。


 飛び出したシングはペリドットへ不意打ちをかけようとするが、見事に空振った。
それでも心配なコハクに、彼は逃げてと叫ぶ。
・・・後ろから「だから逃げられないって言ってんだろ、ドアホ!!」とヒスイのツッコミが入っていたが。
「ちょっとぉ・・・脅迫されてる自覚あんの?」
失敗したとはいえ、不意打ちの上に彼女の予想していた人数よりも1人増えている。
先ほどの様子から一転、ペリドットの機嫌はあっと言う間に悪化した。
ブレイド型のソーマを展開させ、シングを吹き飛ばす。
そしてコハクを引き寄せ、ソーマの刃を突きつけた。
「は〜い、そこまで!おとなしくスピルーンを渡さないとお人形さんに傷がつくよ?」
逃げることも出来ない、怯えるだけのコハクを盾にされては何も出来ない。
言葉につまり、シングは真っ黒なスピルーンを取り出した。
「そうそう、素直な子は好きだよ」
そして、スピルーンを持って来いとベリルを指名する。
「・・・ねえ、そのスピルーンてあの子のなんだよね?」
ヒスイが頷くと、彼女は一瞬顔を歪めた・・・何かを思いついたようだ。
ならばそのパワーを使うしかない、そう言ってベリルはスピルーンを受け取った。

「わあ、つまづいた!」

 ベリルはわざとらしく転んでみせる、そして彼女の手を離れたスピルーンはコハクへと戻った。
予想外の事態に、ペリドットは声を荒げる。
そしてベリルはコハクへ叫ぶ、その人は何もしないと。
本当に、側で大人しくしていれば何もしないと。

「うそ・・・うそッ!うそッッ!!うそだぁぁぁーーーーーッッ!!!」

コハクは叫び、怯え、ペリドットの手を、ペリドット自身をソーマの付けた右脚で蹴り飛ばす。
彼女に戻った黒いスピルーン、司っていたのは疑念。
ベリルの言葉を疑い、ペリドットを敵と見なしたのだ。
一目散に彼女から離れたのを確認、コハクの前に4人が立ち塞がる。
「形勢逆転だな・・・逃げんなら、追わないぜ?」
ヒスイはソーマを展開し、突きつけたペリドットを挑発する。
達それぞれもソーマを展開させたのを見て、彼女が溜息をつく。
「超めんどいけど・・・あんたらをボコってあの子ごと教会に連れ帰る事にするよ!」
「残念、アンタはどっちにしろあたしらにボコられんだヨ!!」