ペリドットのソーマはブレイド型、また彼女自身も接近戦が得意なのだろう。
果敢に、シングへ斬りかかって行く。
「おらおら、どしたぁ!!」
両手のブレイドから繰出される連続攻撃に、彼は防戦一方になる。
そして周囲もきちんと見ている様で、ベリルの思念術もあっさりとかわしてしまう。
「逃げたつもりか?針雀ッ!」
ペリドットが避けた先には、ヒスイが先回りしていた。
ゲイルアークから放たれた3本矢が、彼女の横を掠めていく・・・いや、彼女がとっさの所で避けたのだ。
「深緋の炎念、強き力を・・・やっちまえシング!」
の声に呼応し、シングの下へ強化型弧法陣『パワークラフト』が展開される。
「よし、喰らえ海連刃!!」
再びペリドットへ接近したシングは、アステリアを思いっきり振り上げた。
発生した衝撃波は炎を纏い、彼女目掛け突き進む・・・だが。
「あたしに炎で挑むなんて・・・ばっかじゃない?」
ブレイドに衝撃波は、かき消されてしまった。
そして、そのお返しと言わんばかりに彼女は思念術で反撃した。
「これでも・・・喰らいなっ!バーンストライクッ!!」
ペリドットが右手を上げると、火炎の柱が達目掛けて降り注ぐ。
寸での所でレジスト・ヴィレを発動した物の、かなりの大ダメージを受けてしまった。
治癒術を使おうとするヒスイへ、ペリドットは一気に接近する。
「まず・・・厄介なのから消えなァ!!」
シングが彼の名を叫ぶも、気付いた時には既に手遅れ。
だが・・・彼女も気付いていなかった、たった1人だけ思念術の範囲外に居た事を。
「スラッシュからぁぁぁああああずッ!!!!」
ベリルが、運良くバーンストライクを受けずに済んでいたのだ。
彼女はティエールの筆を、ペリドット目掛け思いっきり振る。
絵具は弾となり、乱暴に突き進む・・・こいつは何であたしの予想外の事ばっかしやがるんだ!!
正に不意打ち、ベリルの動きに全く気付かなかったペリドットは直撃を受けた。
「冷静に弱点を探せ・・・か」
その様子を見たヒスイが、ある事に気が付いた。
「、そいつを止めろ!!」
彼女も同じ事を思ったのだろう、シングとペリドットの足止めを引き受ける。
隙が出来たところで、彼は距離を取ってベリルに声をかける。
「・・・水属性、撃てるよな?」
「ボクのティエールの属性は地だけど・・・まぁ出来なくも無いことは無いけど?」
彼女は少しニヤけ、得意気にヒスイを見上げる。
とシングが完全にペリドットを止めているのを見て、2人は思念術を発動させた。
ペリドットのソーマの属性は火、弱点は水・・・それも物理よりも術に弱い。
「悲しみ秘めて渦巻け海念!」
「涙の海で溺れちゃえ〜!」
表現は違えど込める物は同じ、海に秘められた悲哀。
『レイニードルッッ!!』
針と化した雨が、ペリドットへと突き刺さる。
そして彼女を逃がさぬように、確実に戦闘不能にさせる為シングがサポートに回る。
さらに後ろから、が唐突に現れる。
「消し飛びな・・・轟裂破ぁッ!!」
ペリドットのガードも無視し、思いっきりコーキュートスを前へ突き出す。
の重い攻撃に耐えられず、ペリドットは吹っ飛んだ。
この一撃が決め手となり、勝敗は決した。
「や、やばい・・・こんな奴らに負けたって隊長に知れたら出世どころか降格が大決定・・・!?」
これ以上は無理と判断したペリドットは、なにやらボソボソ独り言を言っている。
4人はまだ戦う意思を見せ、ソーマを彼女へ向け続ける。
この状況をマズいと思ったのだろう、ペリドットは一瞬微妙な顔になり・・・開き直った。
「・・・よっし!今回の件はなかった事にしてやるから感謝しなっ!じゃね!!」
そう言って、4人に背を向け一目散に下山してしまった。
とヒスイは何が起きたのか理解できず、呆気に取られてしまう。
「・・・なんなんだ、あいつ?」
「まったく、あんな性格悪い奴見た事ないよねっ!」
ヒスイの言葉に、ベリルが同調する。
それを聞いた彼は・・・そーか?と、首を捻った。
は未だポカーンとしたままで、シングはコハクの元へ走っていた。
そしてもう大丈夫と、声をかけた瞬間だった。
「きゃぁぁぁーーーッ!!!」
足元が揺れ、コハクが悲鳴を上げる。
地盤の脆いグリムの山が、震え始めた。