神聖都市オズ
砂漠に巣食うドルト蛮族団を撃破し、灼熱のニルルド砂漠を越えた王国軍は、
メリア教国領の入口となる神聖都市オズへと進路を取った。
しかし、神聖都市オズは既に帝国によって包囲攻撃を受けていた。
神聖都市を守っているのはメリア教国のテンプルナイツだったが、
圧倒的な戦力差の前に劣勢を余儀なくされ次第に敗戦の色を濃くしていった。
これを空からいち早く察したキリエは先回りし、
オズの南東にある砲台を制圧、砲撃でテンプルナイツを支援する。
王国軍本隊も急ぎ、テンプルナイツの救援に向かうのであった。
BF30 宗教都市ロンバルディア
ランケットにてロンバルディアの内情をつかんだ王国軍は、急ぎ神聖都市オズへと向かっていた。
斥候の報告で、オズで戦闘が行われていると聞いたのだ。
戦っているのはヨハイム派のテンプルナイツ、そしてユベロン派の軍勢だと言う。
ヨハイム派と言うのは勿論、教皇ヨハイムをトップとした騎士達の事だろう。
ではユベロン派というのは・・・?
「教会の派閥同士の勢力争いかしら?でも、ユベロン派というのは聞かない名前だわ」
ユグドラ達がその名を聞かないのも当然、ユベロン派と言うのは、排他的で暴力的な側面を持つ新興勢力だという。
ならば治安が悪化したと言うのも、きっとその新興勢力の所為なのだろう。
それでも、テンプルナイツが解体されていないことに、一同は胸を撫で下ろした。
しかし何故、新興勢力が急にここまで力をつけたのだろうか。
「きっとまた・・・帝国が絡んでいるんでしょうね、多分何年もずっと前から」
過去を思い出すかのよう、リコリスは淡々と話す。
彼女が外へ出るきっかけとなった事件・・・『砂漠の騒乱』の事を思い出しながら。
騒乱が起きた当年、実は帝国は宗教都市の守護者達を、賞金首として指定していたのだ。
・・・破格過ぎるほどの高額で。
それに目を光らせ飛びついた賞金稼ぎたちが一斉に動き、事が大きくなったが為に『騒乱』と名が付けられたのだ。
あの騒乱が今回への布石であるならば、きっと。
その時ちょうど、偵察に出たミラノの子分が戻ってきた。
「親分!どうやら相手は帝国、それもジルヴァの特殊部隊のようです、騎士の連中が立て篭もって抵抗しているようで・・・」
相手は帝国、ならば迷うことは無い!
王国軍は神聖都市オズへ立て篭もる騎士達へ、加勢すべく動き出した。
まず最初に動いたのは、空から全てを見ていたキリエ。
砲台がある事に目をつけ飛び、一気に敵から奪い取る。
「よっしゃ!砲台はゲットしたよ!これを使って援護射撃するよ!」
言うが早いか、彼女は敵目掛け次々に撃ちまくる。
眼前の敵を蹴散らし、王国軍はオズで抵抗していた騎士達と合流することが出来た。
「あ、貴方たちは・・・?」
「今は奴らを追い出すのが先だ、協力する!」
砲撃の援護を受けながら、王国の兵達も次々と参戦していく。
ユグドラの指示で部隊を二手に分け、それぞれ帝国軍とユベロン派の兵へ突撃をかける。
いくら帝国の精鋭、特殊部隊といえども砂漠には慣れていないのだろうか。
いつもより動きが鈍い。
加えてユベロン派の兵も、王国正規の兵達と比べてまとまりが無い。
テンプルナイツが苦戦したのは、人数の差による問題だったのだろう。
王国軍が参入してからは、敵軍はすぐに崩れた。
「よし、都市は無事だぜ!」
前線で戦っていたミラノの声が届き、王国軍は勝鬨を上げた。
「ご助力痛み入ります、お陰様で都市も守られました」
そう言ってユグドラへ近づいてきた男は、教皇ヨハイム派の騎士ゴードンと名乗った。
彼こそがテンプルナイツのリーダーなのだ。
「失礼ですが・・・ファンタジニアの方々とお見受けしますが?」
王国軍を見て彼は言う。
ユグドラは、戴冠の儀を行ってもらう為、ヨハイム教皇に会いに来たのだと告げた。
それを聞いたゴードンは、深刻な表情になる。
「そうでしたか・・・実は・・・猊下は今、行方知れずとなっております」
何故教皇が行方不明となったかは全くの不明。
テンプルナイツ達も捜索に当たっていたのだが、そこで帝国軍の襲撃を受けたという。
やはり理由は不明だが、帝国軍も教皇を探しているらしいのだ。
「理由・・・多分、戴冠の阻止じゃないでしょうか?」
リコリスの言葉に誰もが気付いた。
戴冠の儀を行う聖域、そこは聖域への扉を開くには守護者の『謳』が必要なのだが、教皇が同行せねば入ることが出来ないのだ。
戦う力のある守護者を叩くより、年老いた教皇を叩いたほうが確実性は高い。
ならば帝国軍より先に、教皇を見つけ出さなければならない。
「どこか、猊下の行方について何か心当たりは?」
デュランの問いに、ゴードンは少し考えてから1箇所だけと答えた。
この土地の北東にある寂れた教会、そこへ向かう途中で帝国軍の襲撃にあったのだからあるいは・・・。
「も、申し上げます!北東の方角に帝国軍、南西都市群にユベロン派と思われる勢力が出現しました!」
突然、伝令が血相を変えてユグドラ達の元へ駆け付けた。
北東の帝国軍は、エミリオ率いる空挺師団・・・かなりの機動力を持っている。
だが南西の敵も放って置く訳にはいかない。
王国軍は北東へ向かうテンプルナイツの援軍としてリコリス含めた魔導部隊、
近衛隊の内、ラッセルの部隊を向かせる。
そして残った部隊は南西都市軍の防衛に向かった。
寂れた教会に向かう道中、リコリスは『何か』を感じ取っていた。
それは教会に近づくにつれて、段々と強くなる。
「これは・・・反応してるのは、僕の力・・・?」